「向日葵の丘」「監督さんって、よく女優さんと飲みにいったりするんでしょう?」と聞かれるが、実は違う?



映画の仕事をしていると、俳優さんと接することは多く親しくなる機会が多い。脚本家のFさんはテレビでお馴染みの有名女優さんとお友達で、2人切りで飲みに行ったりするし、カメラマンのHさんも人気の若手女優さんと仲良し。先輩監督のKさんはアイドルの◎◎さんの携帯番号を知っている。

そんな事実を知ってか知らずか? 映画学校の男子生徒に訊くと、「有名女優と職場結婚できるチャンスがあるから映画の仕事をしたい!」という連中が多い。特に監督業をしていると、若手アイドルから、有名俳優まで。いろんな人と知り合う。が、僕は個人的に決めていることがある。男でも、女でも、俳優さんとはプライベートでは会わないようにしている。

撮影の打ち合わせ、映画の打ち上げ、等では一緒に飲んだり食べたりするが、仕事に関係のないプライベートで飲み会をしたりはしない。「連絡してね!」と携帯番号やメールアドレスを教えてくれる俳優さんもいるが、こちらからはまず連絡しない。そして、もちろん僕からはそれらを訊くことはない。

えーーもったいない!と言われそうだが、理由がある。例えば、俳優さんと親しく付き合い、年に何度も飲み会をしていたとする。と、仕事のない若手の俳優さんは「監督。何か役くださいよー」と言い出す。頻繁に会っていると、情が移り何とかしたくなる。が、そんなことでキャスティングをしては映画が駄目になる。

或いは「仕事くださいよー」と言われても断り続けると、不仲になり、恨まれたりする。そして、もし、その子がブレイクしたとしてから出演依頼をすると「売れたら態度変わるんだ?」と思われる。また逆に、売れている子が急に仕事がなくなり「どんな役でもいいから、出してくださいよー」と言われるのも辛い。

いずれにしても、仲がいいからキャスティングするということは絶対にしない。売れているから出てほしいとか、仕事がないから同情で出演させるとかも嫌だ。その物語に、必要な俳優さんに出てほしい。そのためには一線を引き、日頃からプライベートで付き合わないことが大事だと考える。売れていても、売れてなくても、僕が依頼するときは、その俳優が本当に必要なときなのだから。

僕が大好きな劇団キャラメルボックスの演出家さんは、劇団だのに、劇団員と絶対にに飲みに行かないと聞く。劇団創設からすでに30年。凄い。劇団はみんなで飲んで議論して、殴り合いして、芝居を作って行くところが多いのに、一線を引いている。たぶん、同じ発想なのだろう。もちろん、いろんな俳優と飲みに行く監督や演出家もいるし、それでもいい作品を作っている人はいる。でも、僕は自分でそんなルールを作っている。

もちろん、俳優さんの芝居やライブには行き、楽屋に挨拶は行く。でも、それ以上はしない。パーティに行って、その場に知り合いの役者さんがいたからと「帰る!」とまでは言わないが、知り合いの俳優を飲み会に呼ぶことはまずない。よく、カタギの友達や応援団の方と飲んでいると「女優の◎◎さん。呼んでくださいよ」と言われるが、それはお断りする。

一番大切なのは俳優さんに現場でいい芝居をしてもらうこと。そのためには互いを知る必要はある。が、親しくなりすぎるのはマイナス。互いに甘えが出てくる。「監督は優しいから、少しくらい間違えても許してくれる」とか若い俳優は思いがち、そうなってもらっては困るのだ。ときには現場で俳優を追いつめて、芝居をさせねばならないときもある。そんなときに、その人の辛いプライベートを知っていたら、追いつめることはできない。

だから、親しくしてはいけないと考える。大事なのは、その俳優さんに素晴らしい芝居をしてもらうことなのだから。






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2014年12月17日 Posted byクロエ at 20:19 │Comments(0)監督日記

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