「向日葵の丘」映画の世界に蠢く寄生虫のような人たちーどこかの国も同じ状態?



現在、映画は低予算化をたどり、メジャーでは最低1億。マイナーでは最低3000万がかかる。それを無理して1000万で作る会社もある。それどころか今では50万、300万、ついには50万という作品まで現れた。50万の映画なんて映画学校の実習レベルなのだが、そんなものを映画と称して映画館でかけてしまうことがある。

50万というのは、もう問題外だが、200万。300万の映画はどんどん増えている。撮影期間は2−3日。深夜ドラマと変わらぬ時間で1本の映画を撮ってしまう。後輩たちはよく、そんな作品を監督するのだが、実情を聞くと痛々しい。本当に製作費がないという訳ではないことが多い。

映画というのは低予算でも、その甘い汁を吸おうと寄生虫のような輩が集まってくる。紳士の顔をして、応援する振りをして、笑顔で近づいている連中がいる。友人が担当した映画。「400万の製作費。監督してほしい」と頼まれたが、もともとは1000万の予算があった。

1000万でもかなり低予算なのに、それを下請け会社に出し、さらに下請けに出す。まるで福一の労働者。何もしない会社が下請けに出すだけで、手数料を何十パーセントも抜くのだ。現場に降りて来たときは400万となっていた。何と6割を何もしない人たちが抜いているのだ。

それだけではない。特に悪質なのは「プロデュサー」という肩書きを持つ人たち。シナリオのイメージとはまるで違う俳優をねじ込もうとすることがある。「何でこの役者なの?」と思うことが多い。それは俳優事務所と癒着しているから。1人映画にキャスティングすればいくらもらえるとか、それによって別の作品で便宜を計ってもらうとかが目当て。

ただ、低予算なんだから、ギャラもしれてる。事務所はあまり儲からない。いや、それでもプラスなのだ。俳優の仕事は大変で1年に1本も仕事がないことがある。今年はゼロ。となると、「売れてないんだな?」と思われる。だから、ギャラが安くてもプロフィールにタイトルを書き込める仕事をしたいのだ。或いは新人なら、ギャラが安くても、経験と勉強。現場で芝居ができるだけでもメリット。そんな仕事をまわしてくれるPは事務所から重宝される。

低予算なのに、いろんなスタッフを呼んで来る。予算がないのだから、少数精鋭でやるべき。衣裳メイクは1人にするとか、技術部の助手はなしにするとか、いろんな節約はできるのに、呼んでしまう。というのも、その彼らを呼び、それなりのギャラを払うことで恩を売っているのだ。以前の仕事でギャラを安くしてもらったとか、義理があるとかで、さほど必要ないスタッフを呼んでくる。

人権費が増えると、撮影日数を短くするしかない。宿泊費や弁当代も嵩む。1週間かかるところを3日で撮る。当然、作品レベルが下がる。でも、Pは気にしない。多くある仕事のひとつにしか過ぎないから。そんなことより、俳優事務所やスタッフに恩を売っておくことが大事なのだ。

でも、超短期間の撮影。おかしなキャスティング。多くのスタッフは次第にやる気をなくし、とにかく撮ればいいか....と諦めムードになる。結果、素晴らしい作品は絶対にできない。

他にもある。映画の中で商品を出すから、タイアップ料を払ってほしいと企業に売り込む。これはテレビでもよくあることだが、問題なのは、明らかに映画の中で出てくる必要のない商品を無理に出そうとすること。タイアップでなくても、スポンサーの商品を出し、ご機嫌を取ったり。ひいきにしてくれる会社の商品を使い、これまた恩を売る。

それを監督には「マストだから!」といって、シナリオにない商品を映画の中で出すように要求。むりやり、その商品が出るシーンを作らせたり。そんなことをすれば物語が壊れて行く。観客だって違和感を感じる。

でも、それで恩を売れるので強制。監督は「違うよな〜」と思っても、Pからまた仕事をもらうことを期待して嫌々ながらも受け入れる。こうして低予算の上に、お話が脱線。シナリオとは違うイメージの俳優が演じる、どーしようもない映画が撮影されるのだ。

目も当てられない酷い映画はそんなふうにして誕生する。観客は舞台裏が分からないから「何で、こんな低予算で、役者もミスキャストで、ずさんな映画を作ったんだろう?」と思いながら映画館を出る。でも、寄生虫のような人々にとっては低予算映画も、俳優事務所やスタッフに恩を売り、製作費を抜いて、お得意様の商品まで出して喜ばれる、大事な仕事なのだ。もちろん、内容は最悪だが、それは気にしない。

僕もそんな会社やPと何度も出会った。或いは仕事をした。絶対にいいものはできない。監督がどんなに努力しても、上がバカだとどうすることもできない。でも、どうすれば、素晴らしい作品が撮れるのか? 

どうすれば何もしないで金だけ抜く連中を切り離せるのか? どうすれば、役に合ってない俳優を入れずに済むのか?この10年、試行錯誤を繰り返して、今はその手の輩をシャッターアウト。よりよい映画作りができる体制を作った。

会社経営や国の運営も同じだ。立場を利用して、私腹を肥やす奴。不必要なことに金をまわす奴。業界内で恩の貸し借りを続ける奴。全て会社や国のためではなく、自分の立場を守るため、自分の勢力を拡大するため、だけに行動している。国民や消費者のことは考えない。

どこかの国も同じ。金持ちや大企業を優遇。税金を安くして、その分、国民に高い消費税を払わせる。官僚の天下りのために不必要な財団を作る。戦争ができる国にすることで武器メーカーを儲けさせる。国民のためではなく、大企業の利益のためにだけ努力する政府。映画の世界も同じだ。

観客が感動することではなく、自分の立場を守り、力あるものにこびるために立場を利用する。そうして組織も国も腐って行くのだ。映画の世界を見ていても、それを実感する。

「まあ、どこの世界にもあるからな」と容認していはいけない。それを排除しなければ、いい映画も、いい商品も、いい政治もできないのだから。





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2014年11月21日 Posted byクロエ at 20:03 │Comments(0)MyOption

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