「向日葵の丘」映画監督残酷物語② 作品作りの前に抵抗勢力と戦う?



前回の①がなかなか評判だったので、続きを書いてみる。映画監督というのは何年に1度しか仕事が出来ない上に、その期間でギャラを割ると単なる低所得者になってしまうことが多い。が、それでも、ノーギャラでも映画を監督したいという新人も多い。ベテランでももう20年以上監督していない人がいるし。監督デビュー作以来何も撮っていないという人もいる。

皆「そろそろ、1本撮らないと『監督』と呼ばれるのも辛いなあ...」と思ったり。映画監督になるだけでも大変なのだが、撮り続ける。まして1年に1本監督とするというのは至難の技なのだ。だが、その1本を撮るときにも、更なる戦いが待っている。作品作りの戦いではない。それ以前の過酷な戦いが待っている。

基本的に映画監督というのは、製作費の中では全てを決める権限がある。キャスティング、スタッフィング。シナリオ。音楽。セット。ロケ地。etc....なのに、今の映画界はそうはいかない。今回は主演俳優のことを書く。主演は監督が決まる以前に決まっていることが多い。だいたい、今旬の人気タレント。「シナリオ(或は原作)のイメージと違うだろう?」ということもあるが人気者に決まってしまう。会社側は「人気の***でないと客を呼べない」と判断するのだ。

さらに、その人気タレントはテレビのバラエティ番組をはしごして、宣伝しまくってくれる。それが映画会社にとって大事なのだ。何億円もの宣伝費を使わずとも告知できる。その役にふさわしい演技力のある俳優よりも、人気があり、レギュラー番組を持つタレントが映画に起用されるのは、そういう背景がある。

しかし、客がタレント人気で映画館に来ても、明らかに主人公のイメージと違うので違和感が漂う。原作を読んでいる人は「違うよなあ〜」と不満。こうして映画館に客は来るが、満足せずに帰るということになる。なのに、これを監督はどうすることもできない。「俳優の****の方が合っている!」といっても駄目。そんなことを主張すると、俳優ではなく監督自身が交代となる。

それどころか、その人気タレントと同じ事務所の売れない俳優たち、おまけに着いて来て、それなりの役で使わなければならない。これでまた客には「イメージ違うんだよなあ」と批判される。さらに、人気タレントサイドからは、台詞、衣裳、等についてもうるさく言ってくる。「うちは***のCMに出ているから***ジュースは飲めない」とか、「このシーンはスポンサーサイドに迷惑をかけるので変更してほしい」とか、

さらには現場でモニターを見て「うちの***子。あごが二重に映っているから撮り直してくれ」というマネージャーまでいる。「だったら、撮影前に痩せろ!」と怒鳴りたくなるようなことがある。基本、俳優と違いタレントは「演技」を一番の仕事とは考えておらず。それなりの芝居しかしないことがある。

多くの仕事のひとつ。そんな風にしか思わず。撮影中も明日のテレビ番組のことで頭がいっぱいとか。「夕方からテレビの収録があるから、それまでに撮影を終わってほしい」とか、無理な注文も出る。だったら、映画に専念できる俳優を主演にすればいいのに、会社側は人気タレントを起用したがる。監督はやる気のない俳優をなだめ空かして撮影、てなこともある。

主演俳優だけでなく、いろんなところから、****市でロケしろ、****さんのレストランを使え、*****社の製品を画面に出せと、主題歌は***レコードの***にしろと、いろんな指示や圧力、横やりが入る。それらを受け入れることで物語の世界観が壊れるとしても、ガンガン言ってくる。

監督はまず、それらと戦い。必要なものを採用。いらないものを封じ込めてから、監督業を始めなければならない。それをしないと単なるご用聞きとなり、とても映画と呼べるようなものは出来ない。

そんなふうに映画を作るより、それ以前の戦いからスタートするのが監督業である。そんな映画でも監督できるのは数年に1本。そこで会社に逆らえば次の依頼はなくなる。従うとロクなものができないのに「あいつは実力がない」と判断されやはり依頼されなくなる。そんな因果商売でもあるのだ。





同じカテゴリー(監督日記)の記事画像
「向日葵の丘」その昔、僕がトラブルメーカーと呼ばれた理由?
祝・僕の前作「朝日のあたる家」バリ島での上映会が決定した!
「向日葵の丘」血がドロドロと言われて....納豆を食べる。
「向日葵の丘」今宵は 中森明菜を聴きながら、ジムビーンズ。
漫画「漂流教室」を41年振りに読んで。 大人たちが時代を謳歌したツケを未来にまわしたことで、苦闘する子供たちの物語。
「向日葵の丘」41年振りに読んだ「漂流教室」衝撃だった。これは今の日本か?
同じカテゴリー(監督日記)の記事
 「向日葵の丘」その昔、僕がトラブルメーカーと呼ばれた理由? (2015-06-04 23:09)
 祝・僕の前作「朝日のあたる家」バリ島での上映会が決定した! (2015-06-02 13:08)
 「向日葵の丘」血がドロドロと言われて....納豆を食べる。 (2015-05-29 20:38)
 「向日葵の丘」今宵は 中森明菜を聴きながら、ジムビーンズ。 (2015-05-20 22:47)
 漫画「漂流教室」を41年振りに読んで。 大人たちが時代を謳歌したツケを未来にまわしたことで、苦闘する子供たちの物語。 (2015-05-20 11:11)
 「向日葵の丘」41年振りに読んだ「漂流教室」衝撃だった。これは今の日本か? (2015-05-19 20:31)

2014年08月18日 Posted byクロエ at 23:56 │Comments(0)監督日記

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
「向日葵の丘」映画監督残酷物語② 作品作りの前に抵抗勢力と戦う?
    コメント(0)