「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ/その13

「向日葵の丘 1983年・夏」撮影現場ルポ/その13
~鯛焼き屋にたくさんの登場人物たちが集合
by 永田よしのり(映画文筆家)
朝から家山地区にある鯛焼き屋・桜屋をお借りしての撮影が始められる。
この鯛焼き屋も実際に営業している地元では有名なお店。
駅からもほど近い場所のため、時々SLの汽笛も聞こえてくる。
そこを入口から「桜屋」の看板などを美術スタッフが飾付け、劇中の登場人物たちが集う場所として撮影するのだ。
この日は登場人物たちが今までの撮影で一番集まるものに。高校生の多香子たちがよく出入りしていた鯛焼き屋という設定だ。
多香子(芳根京子)、みどり(藤井武美)、エリカ(百川晴香)のとっとこ3人娘(彼女たちが人気アニメのキャラクターのように見えたことから、撮影初日監督によって命名された高校生トリオの呼び名)はもちろん、桜屋のおばあちゃん・ウメさん(岡本ぷく)、その娘・桜子(斎藤とも子)など、これまでの撮影シーンの中でも一番たくさんの俳優たちが一同に集まる場面だ。
その他にも市民俳優の方々も参加するため、店内はスタッフも入れるとなかなかに満杯状態。
現場はこれまでよりも和気あいあいとした雰囲気(中でもムードメーカー的な役割を担うのは最年長の岡本ぷくさんだ)。
店内ではそれぞれの座り位置などが決められ、監督が台本に沿った撮影説明、段取り、テストなどを指示していく。
撮影本番前に監督からそれぞれのキャスト紹介、スタッフからの拍手を俳優陣が受けてから本番が開始される。
多香子たちが座る店内の座敷席には、ブラウン管の旧式のテレビも設置。それを多香子たちは「初めて見たー」「古ーい」と当たり前のような感想を発して盛り上がっている。
監督からは「舞台のステージのような感覚で芝居をしてみよう」と提案。一連の台詞や動きがまずはワンカットで追われていく。
そこでの芝居をキャメラは数通りの角度から撮影(切り返しという撮影手法/芝居を見ながら登場人物を紹介していく)。
さらにワン・シーンを複数のキャメラで撮影、これで一気にカット割りを考えることができる。
途中「それぞれの台詞がかぶらないように注意して、あと台詞をもう少しゆっくりと」と、監督から注文が入る。
登場人物が多い場面のために、どうしても一気に喋ると台詞が聞き取りづらくなる場面も出てしまうのだろう。そこを監督は注意しているのだ。
そんな撮影の合間、スタッフが撮影準備を整えている時間には俳優陣が雑談したり、台詞合わせなどをしているのだが、世代を越えた俳優たちが集まって盛り上がっている姿を見ると、なにか長い付き合いのある近所の人たちが集まって歓談しているかのように楽しげで、とても映画の撮影をしているとは思えなくなってるのが不思議だ。
多香子たちが鯛焼きを食べるシーンでは、監督から「小道具にラムネがあるといいよね」と提案。入手できるかどうかすぐにスタッフが地元のフィルムサポートに交渉。
幸いなことに地元の商工会議所で1ケース確保できることが確認。午後からの撮影で使用できることになった。本当にこのスタッフは、様々な提案や要求に即時対応するフレキシブルさを備えている。
現場で対応できることはすかさず対応していく。プロの集団なのだ。(つづく)

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2015年04月10日 Posted byクロエ at 10:15 │Comments(0) │ルポ
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